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コラム

無料のおまけが「商品」になる時代。飲食店主がちょっと怖くなった話

「無料のおまけなんだから、そんなに厳重に管理しなくてもいいでしょ」

普通に考えたら、そう思いませんか?

だって、無料です。

売り物じゃない。

お客さんにプレゼントするもの。

ところが今の時代、この「無料のおまけ」が、ある瞬間に突然——

商品になる。

しかも下手をすると、普通に売っている商品より高くなる。

先日、そんなことを考えさせられる記事を読みました。

そして飲食店をやっている僕は、

「これ、結構怖い話だな……」

と思ったんです。


きっかけは、くら寿司と「ちいかわ」のコラボ

2026年8月、くら寿司で「ちいかわ」とのコラボキャンペーンが始まりました。

ところがその後、SNS上で景品の不適切な取り扱いが指摘され、調査の結果、従業員による不正行為が判明。

最終的に、くら寿司は9月6日の営業開始からコラボキャンペーンを中止しました。

なお、ここは大事なので書いておきます。

従業員による不正行為が確認されたことと、その従業員本人がフリマサイトで景品を転売したことは別の話です。

参考にした弁護士の解説記事でも、後者については当時「確認中」として区別されています。

僕は法律の専門家ではないので、

「これは何罪だ!」

みたいな話をするつもりはありません。

僕が引っかかったのは、もっと単純なところです。


「無料なのに、盗む価値がある」

これです。

なんだか変な話ですよね。

店側から見れば、

「お客さんに無料で配る景品」

です。

でも人気キャラクターだったり、

数量限定だったり、

そこでしか手に入らなかったりすると、

フリマサイトでは普通に値段がつく。

つまり、

店では0円。
ネットでは数千円。

ということが起きる。

同じ物なのに。

弁護士の解説記事では、こうした限定景品について、企業は単なる無料の販促物ではなく、換金可能性のあるものとして管理する必要があると指摘しています。

これを読んで、

「なるほどなぁ……」

と思いました。


たとえば「くまきち」を無料で配ったとする

ここからは想像の話です。

うちの店には「くまきち」というキャラクターがいます。

仮に、

「Wazn限定・くまきちアクリルキーホルダー」

を作ったとしましょう。

先着100名。

非売品。

来店した人だけプレゼント。

店側としては、

「お客さんに喜んでもらおう」

くらいの気持ちです。

ところがですよ。

ある日、何気なくフリマサイトを開いてみたら、


Wazn限定!
くまきち非売品キーホルダー
3,800円


とか書いてあったらどうでしょう。

僕はたぶん最初に、

「え、俺にもその値段で売ってくれない?」

と思います。

……いや、作ったの僕なんですけど(笑)


原価と価値って、全然違うんですね

ここがおもしろいところです。

仮に、そのキーホルダーを作る原価が300円だったとします。

だからといって、

価値が300円とは限らない。

欲しい人がたくさんいて、

100個しかなくて、

もう二度と作らない。

となった瞬間、

300円で作った物に3,000円の値段がつくかもしれない。

逆もあります。

3,000円かけて作った物でも、

誰も欲しくなければ、

価値はほとんど生まれない。

つまり、

「いくらかけて作ったか」と
「人がどれくらい欲しいか」は別の話。

商売をやっていると当たり前のようで、

改めて考えるとなかなか深い話です。


そして僕は、肉を見た

ここまで考えて、

目の前のハンバーグを見ました。

……。

「これも同じじゃないか?」

と。

もちろん、

お肉の質。

量。

ソース。

焼き加減。

料理そのものはめちゃくちゃ大事です。

飲食店なので、そこを雑にしたら話になりません。

でも、

お客さんが料理に感じる価値って、それだけなんでしょうか。


人は「200gの肉」だけを食べに来ているわけじゃない

たとえば数年後。

「あのハンバーグ200gだったよね」

と覚えている人は、それほど多くないでしょう。

でも、

「あのとき浅草で食べたハンバーグ、うまかったな」

「あの店のマスター、なんか変なこと言ってたな」

「デミグラスにマスタードって最初どうなの?と思ったけど、意外とうまかった」

「あそこで友達とくだらない話して笑ったな」

こういうことは、

意外と覚えていたりします。

料理を食べているようで、

実はその場所で過ごした時間まで食べている。

そんな気がします。


個人店って、実は「限定品」なのかもしれない

大きなチェーン店には、

個人店には到底かなわない強さがあります。

仕入れ。

広告。

知名度。

店舗数。

便利さ。

どれを取っても強い。

じゃあ小さな店はどうするんだ?

と思うことがあります。

でも今回の「限定景品」の話を考えていて、

少し答えが見えた気がしました。

個人店には、

「この人がここでやっている」

という価値がある。

店主との会話。

店の雰囲気。

常連さんとのやり取り。

くだらない冗談。

「久しぶり!」

「今日は何食べる?」

そんなもの全部ひっくるめて、

その店になる。

同じものを大量生産できません。

ネット通販もできません。

フリマサイトにも出品できません。

そう考えたら、

個人店って毎日営業している「限定品」みたいなものなのかもしれません。


……ところで、誰がこんなことを書いてるの?

ここまで読んで、

「ところで、この人は何者なんだ?」

と思ってくれた人。

ありがとうございます。

だいたい狙い通りです(笑)

僕は浅草で、

ハンバーグ&ステーキとカレーのお店
「Wazn(わずん)」

をやっています。

普段は文章を書くより、

肉を焼いている時間のほうが圧倒的に長いです。

そんな人間が、

ニュースを見たり、

街を歩いたり、

お客さんと話したりしながら、

「これって、なんでなんだろう?」

と思ったことを、このブログに書いています。


Waznにも、ちょっと変な「限定品」があります

うちのハンバーグは、

デミグラスソースにマスタードを合わせます。

初めて聞いた人はだいたい、

「デミグラスにマスタード?」

という顔をします。

いい顔です。

僕、その顔を見るの結構好きです(笑)

でも食べてもらうと、

「なるほどね」

と言ってもらえることが多い。

この、

「え?」から「なるほど」

に変わる瞬間。

実は僕が料理でも、このブログでも作りたいものなのかもしれません。


「記事を読んで来ました」なんて言われたら

僕がこのブログを書いている目的は、

毎回、

「Waznに来てください!」

と叫ぶためではありません。

それより、

「この記事、なんか面白かったな」

と思ってもらいたい。

そして、

「誰が書いてるんだろう?」

と思ってプロフィールを見たら、

「あ、浅草で店やってる人なんだ」

と知る。

そのあと浅草を歩いているときに、

「あの店、この辺じゃなかったっけ?」

と思い出してもらう。

それくらいの距離感がいいと思っています。

でも、本当に来てくれたら。

ぜひ一言、

「ブログ読んで来ました」

と言ってください。

たぶん僕は、

「本当に来た!」

って笑います。


今回の記事を読んで、

「無料のおまけにも価値があるんだな」

と思って始めた話でしたが、

最後は、

お店の価値って何なんだろう?

という話になってしまいました。

世の中、どこから話が転がるか分かりません。

ちなみに。

くまきち限定キーホルダーは、

今のところ売ってません。

もし本当に作ったとしても、

お願いだから3,800円では転売しないでください。

マスターがちょっと複雑な気持ちになります。

それでは。

浅草でお腹が空いたときは、

Waznでお待ちしています。

文章よりマスター本人のほうが面白いのか。

その確認も兼ねて、どうぞ。


Wazn(わずん)

浅草のハンバーグ&ステーキとカレーのお店。

ハンバーグ、ステーキ、カレーを作りながら、マスターが世の中で見つけた「ちょっと気になること」を勝手に考えるコラムを更新しています。

浅草に来たら、お腹を空かせてどうぞ。

※本記事は公開情報および専門家による解説記事を参考に、飲食店を営む立場から感じたこと・考えたことを書いたコラムです。特定の企業・個人を批判したり、法的な判断を行ったりすることを目的としたものではありません。また、読み物として楽しんでいただくため、一部に想像上の例やユーモアを含んでいます。エンタメ要素もありますので、その点はご理解ください。

参考記事:くら寿司「ちいかわ」コラボ景品問題から考える(ファースト&タンデムスプリント法律事務所)

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